東村アキコ「雪花の虎」3巻レビュー

歴史好きには有名な「上杉謙信女性説」を東村アキコが描く『雪花の虎』。
上杉謙信が女性なのか?を検証する作品ではない。

女なんです!少なくとも、この作品内では!


3巻は、謀反を起こした配下、黒田との戦。
本来指揮をとるはずの兄が病気のため、かわりに女謙信、景虎が戦い、あっさり黒田を生け捕りにする。
「腹を召されよ、黒田殿。」

兄の助けになりたくて戦ったのに、兄は女にも劣る軟弱者で、妹のほうが勇猛だと広まってしまう。

男に生まれていれば、このまま立派な戦国武将コースだ。
だけど女に生まれたばかりに、主になってほしい家臣と、「女らしい」生き方を願う姉との板挟みになる。

ただ華やかだから「女謙信説」を描いたんじゃない。
性の違いが、語りつくされてきた歴史ものに新しいドラマを起こす。

そして何より、かっこいいんです。
「女の大将は嫌か?」

『FLIP-FLAP』や、「漂流」を読みました!


まず今月のキンドルセール本!
掘り出し物感のある一冊「FLIP-FLAP」紹介書きました。
キンドルは専用端末を持ってなくても、パソコンやタブレットに表示させて読めます。ぜひ。

アオシマ書店のレビュー欄に飛ぶよー



角幡唯介「漂流」
活字から離れていたけど、久しぶりに大好きな作家のルポをカバンに入れて持ち歩いた。



一カ月の漂流生活から生き延びた漁師がいた。
当時は「奇跡の生還」ともてはやされたんだけど、
その漁師は何年もたって再び海に出、再開1回目で再び漂流し、消息不明になっていた。

海の恐ろしさを知っていた人がなぜ?
という謎を追いかけるうち、
彼の出身の島が、ちょっと変わった気風であることがわかってくる。

北朝鮮拉致説を唱えるのは仲間由紀恵のおじいちゃん。
過去のものと思っていた事件が、バシッと今と繋がる感じに驚いた。

と、題材は魅力的なんだけど途中からちょっとだれてきて…。
冒頭だけ紹介してレビューすることもできるんだけど、
結局は前の「アグルーカの行方」が大大大傑作なのであっちを買ってほしいという結論になった。




13日はPS4で「パックマンCE2」配信なので、そちらにかかりっきりの予定。デッドプールのDVDも観る。

kindle unlimitedで「奇面組」「燃える!お兄さん」無料。ギャグ漫画の終わりは切ない。


月額1000円で対象本全部読み放題の、
キンドル アンリミテッドに加入して20日ほど経った。

どういう基準で対象作品を決めてるか謎(最近の本はほぼ対象外)なんだけど、たまに昔の漫画や雑誌がまとめて読めて嬉しい。友達の家で「燃える!お兄さん」が置いてあったら、買いはしないけどちょっと読みたいでしょ。



巻末のことばに「新人離れした画力」と紹介されている。同時代の漫画と並べると、確かに凄い。

僕が紹介記事を書いた「バーナード嬢曰く。」も対象。

アオシア書店:「バーナード嬢曰く。」

名前だけは知ってたけど読んだことなかった「すすめ!パイレーツ」「がきデカ」全巻対象。

リアルタイムで知らないので、これが当時どれほど衝撃で、どんな見方をされてたのか分からないけど、ストーリー漫画よりもギャグは耐久性が弱い。
登場人物が若くて「明るいなあ」って感じたり、女子が可愛くて、当時から画力が凄かったんだなあと感心したり。
普通にギャグで笑って読めることはあんまりない。


奇面組の終わり方はさびしい。



「奇面組の最終回」
と聞くと、そうそう「ハイスクール!奇面組」のオチ、あっけないんだよね!と思われるだろうが、
「3年奇面組」「ハイスクール!奇面組」のあとに、シリーズ3作目の「フラッシュ!奇面組」がある。
掲載誌がジャンプからガンガンに変わったのかな。

それが、別に勢いが衰えたような印象もないんだけど未完で連載が止まってる!
フラッシュ!はレビューもほぼ見当たらず。最後の方は、先生が家庭訪問で生徒の家に次々あがりこんでいく話。

何があったのかWikiで調べることぐらいしかできなかったけど、よくわからず。
作者の腰痛があったそうだけど、これっていうひとつの理由があるわけじゃなくて、自然にフェードアウトしていったっぽい。
登場人物たちは大人になることなく、ずっと本の中で青春時代のまま過ごしているような。

あ、読み放題対象じゃないけど「1,2の三四郎」は読んでて元気になった!
ギャグ漫画と紹介されてたけど、スポーツ漫画だよね。

オールアウト!!は赤山先輩のメッキがはがれる姿を見るマンガです。

アニメ放映が近づいて「オールアウト!!」の話が少しづつ入ってくるようになった。

前に書いた紹介文はこちら

1巻は熱血スポーツ物の要素が強かったけど、表紙がどんどん腐女子向けにそれていく。
楕円形のボールはどっちに転がるかわかりませんな!

試合前の練習量とコミュニケーションがものをいうスポーツなので、ずっと選手同士が汗を流し励ましあって練習する。
なんていうか、
ラグビーというスポーツが持つ性質と、そういうシーンを好む腐女子な方々が、ガッチリ合っちゃった感じ。

野球マンガだと、読者がみんなルールを知ってる前提で話が進むけど、ラグビーだとそうはいかない。
それで全くルールを知らない、祇園くんという主人公に読者は意識を重ねて、いっしょにラグビー部に飛び込むことになる。

だけど読んでみたら、祇園くんはあくまでもナビゲート役で、
主人公っぽく悩んだり活躍したりするのはキャプテンの赤山。




こんな。(画像クリックでアマゾンに飛んじゃいます)

最初から新入生の祇園の前に立ちはだかって徹底的にしごく彼だけど、すぐ柔らかくなって泣いたり笑ったりするし、
「髪形は、なめられないようにわざとああいう感じにしている」
のが早々に明かされたのが印象的だった。
白いところをくりっとねじってるだけで意外と時間はかからないとか。

「マンガの怖い人は、髪形や衣装をどうやって準備してるのか」問題に、あっさり踏み込んだ。
怖い人どころか涙ぐましいじゃないか。

初見怖いけど、メッキがぽろぽろはがれていく、素の赤山先輩に注目です。

次巻以降も取り上げることができれば、もっと細かいセリフに注目して追いかけていこうかと思う。

淋しいのはアンタだけじゃない1巻レビュー



ルポ漫画を描いている作者の、新作テーマは聴覚。

取材に応じてくれたのは2人の会社員。
1人は生まれつきほとんど音が聞こえず、1人はクラクションを鳴らされてやっと車に気付く程度。
「ぼくらマンガが大好きなんです!」
擬音表現で音を知った彼ら。取材は順調に進み、当時話題だった佐村河内守の話をふった。

「彼のように、聞こえるけど聞こえないとウソをつく人もいるけど、あの事件はどう思われましたか?」
手話が返ってくる。
「佐村河内はずっと前からボランティアで来てくれていた。失聴していたはずです。本人は聴力が戻ったと言っているが、本当にそんなことがあるのか、わからない」

本当のことを知りたい、取材したいと手紙を書き、佐村河内家のポストに入れた。
まだこのとき作者は「覚悟」をしていなかった。


●医者は「慣れろ」と言った

次の女性の体験談は壮絶だった。
ごく普通にしゃべって、何も不自由に見えない彼女は、実際は4年前に高熱が出て両耳を失聴。
聞こえないこと以上につらいのは耳鳴り。頭のすぐ上で「ジェット機が飛んでいる」。

ファミレスの間近でジェット機が飛ぶ異様な光景が描かれる。
本作では、多様な聴覚障害を、マンガならではの吹き出し、擬音を使って見せる。
セリフが入った吹き出しを真っ白にしたり、言葉をゆがめたり、擬音を前面に大きく書く。
どれも、聴覚障害者の症状を、可能な限り絵で表現したもの。

最初に取材した会社員がマンガで
「聞こえる人の世界ってこんなに音があるんだ!」と知ったのと逆に、
聞こえる側が
「聴覚障害の世界ってこんな感じなんだ!」と一目でわかるようになっている。


福祉大学出身の作者は、自分は何も知らなかった、と過去を振り返る。
ダメな大学生活を送って、TV業界に入った。ドキュメンタリーを作りたかったけど、人にカメラを向けるのが苦手ですぐに辞めた。
そこから、人と関わらずに作る「ドキュメンタリー漫画」を作った。


●公開の見通しすら立っていなかった「FAKE」

忘れかけていたころに佐村河内サイドから返事が来た。

「実は今、極秘でドキュメンタリー映画の密着取材を受けている。撮られる覚悟があるなら取材に応じる」
監督兼カメラマンは森達也。オウム真理教を扱った映画「A」のため、教団内部に13カ月住み込んだ男。
かつてドキュメンタリー作りに憧れていた作者にとっては尊敬する人物。

とんでもない2人と同時に関わるチャンスが転がり込んできた。


●主人公は彼だった

聴覚障害の漫画のつもりで読んでいたら佐村河内の話が出てきて、森監督といっしょに事件の真相に迫るのか、と思いきや作者がクヨクヨ悩み始める。
これ何の漫画? 聴覚障害と佐村河内、どっちがテーマなわけ?

だけど「作者自身が主人公なんだ」とわかった瞬間にスッキリする。

福祉から逃げ、撮影現場からも逃げてきた作者の前に再び、福祉と撮影のからんだ難解な案件が立ちふさがる。
一旦は逃げ腰になった作者だが、
「今度は逃げない」
と決心する瞬間を描いている。

佐村河内家で取材した作者らは、監督のある行動で自分たちとの違いを思い知らされることになる。
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