「ブレイキング・バッド」「文藝芸人」感想

3月20日「ブレイキングバッド」「文藝芸人」感想

今さら。

NETFLIXでブレイキングバッドシーズン1鑑賞。



「明日地球が終わるとしたら何したい?」
ってたぐいの質問があるが、
「静かに家族を集めて、ありがとうと伝えたい…」
なんて綺麗ごとを言わない人のドラマだ。


地味に地味に生きてきたのに、突然末期ガンを宣告された化学の先生が、
「もう知るかー!」と爆発。
完璧主義の性格と知識を生かして、最高純度のドラッグを作って、
足の不自由な息子と妻のために大金をつくる。

バイヤーとして不良生徒の1人をパートナーにして(こいつにとっては、大変な巻き込まれサスペンスだ)、
先生もサングラスをして、虚勢を張ってギャングに取引を仕掛ける。
優等生ほどキレると怖いというが、
負け犬人生最後のブチ切れっぷりが痛快。

俺たちが密かに考えていたけど結局できないことを、代わりにやってくれた!

「なんでこんなことになっちゃったんだよお」って困り顔で、どんどん悪の世界に染まっていく。
気が小さいため、死体の処理をまかされて「どうしよう…」と嘆いたり、ブラックな笑いが随所にある。
インテリがギャングに仕掛ける、科学知識を使った戦いも手に汗握る。
たとえ相手が強くても、不意打ちなら勝てる。もし仕留めそこなえば五体満足ではすまされない。



ほか、吉本芸人の文芸誌「文藝芸人」を読んだ。

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

ナイナイ岡村が精神を病んだときの告白。
博多大吉による、地方芸人のリアル。
横澤夏子が語る同級生への劣等感。
森三中大島の、美人が語る形式の小説。

完成度よりも、意外な才能の発見を楽しみにしていたけど、
「この人の文章面白い!」と思った人はすでに出版経験がある。野沢直子さんとか。
笑い飯哲夫は三島由紀夫論を発表。読者を圧倒するしゃべくり文体は町田康みたい。小説も書かないかなあ。


あんたスゲエよ!と思ったのは、キングコング西野。
圧倒的ブレなさ。
自分が絵本をどうやってヒットさせたかをひとつづつ振り返っている。

絵は得意じゃなくても、ひたすらコツコツ書き続ける。膨大なアンチが勝手に拡散してくれる。
日本でインスタが普及する前から目をつけ、拡散しやすいように正方形の絵で描いていた。
売れたあとは、ぱーっと無料配信。このときも多くの人が反感と共にツイートしていたが、だいたい予想していたっぽい。
「とりあえず知ってくれなければ話にならない」
次はウォルト・ディズニーを倒します、と謎の宣言で締めているが、アニメの分野にも手を出すのか。

精神が病んだエピソードを明かしたナイナイ岡村とは対照的。
次に「しくじり先生」スペシャルをやるべき大物は岡村さん。

全体的な印象は思ったより地味というか、堅実。

次の「火花」「ドロップ」を作るぞー!ってノリではない。

TVとは違う発表の場を設けてみましたよ、って感じ。
紙でできた劇場。

島本和彦「アオイホノオ」16巻レビュー

島本和彦「アオイホノオ」16巻が発売された。



主人公は芸大生時代の作者をモデルにした青年「ホノオ」。
あまり漫画は描かないが自分を天才だと信じ、あだち充や高橋留美子にも
「俺だけは認めてやろう!」と上から目線で評価する。

センスがないから漫画をやめるしかないのか、と思ったりもした。
(編集者にセンスがないから、自分が天才でも理解できないんじゃないのか、と思った)
それでも、豪快な屁理屈と負け惜しみを言いながら成長していく。

いつの時代にもいる「イタい若者」ホノオは、奇跡的に新人賞に引っかかってプロデビュー。
デビュー作が掲載された、82年の「少年サンデー新春増刊号」を、
あえて1ページ目から、作者が実際にしたであろう読み方で読んでいく。

六田登、高橋留美子、新谷かおる、原秀則。
原秀則「らぶらぶぽりす」は刑事もの+ラブコメ。
流行の素材を組み合わせた強引な展開だが、主人公のカッコよさで押し切る。
「俺には…怖くてこれを描く勇気はない!」
アマチュア時代には凄さがわからなかった原秀則が、プロとしてあらためて読むと「怖い」。

怖い物知らずだったホノオは、プロの洗礼を受けていた。

やる気を見てほしくて次回作のネームを書いても、編集者からは厳しい言葉が返ってくる。
片思いしていた女性には恋人がいて、仲間からは、パロディばかりやっていることをダメ出しされる。
根拠のない自信が、的確なダメ出しで折れていく。

夢だった漫画家になったことを褒めてもらいたいし、喜びを分かち合いたいのに。
せっかく練習したサインも、誰ひとり求めてこない。

さすがに大人しくなったところに、かつて才能の違いを見せつけられた同級生、庵野秀明がやってくる。
手には、ホノオのデビュー作が掲載された少年サンデー!
「よかったらサインくれよ」

庵野には才能があった。夏をアニメ制作につぎこんでいた。
それなのに、先に有名になったホノオへの嫉妬もなにもない。
「受賞したことはすごい。プロになることはすごい。だからサインが欲しい」
人間性は関係なく、作品だけで評価するドライな人間性。

ホノオも「サインくれよ」のひと言をポジティブに解釈する。
庵野は凄い奴だ。だから、俺の凄さがわかったんだ。
練習したてのサインを必死に書く。
「ちょっと待て!こっちに絵入りのやつも描くから!」

この巻が出版された2016年に、島本和彦は「シン・ゴジラ」を絶賛するツイートをして、
発声上映会にサプライズ登場した庵野秀明と握手していた。
庵野が古くからの友人だから褒めたんじゃない。ただ、作品が良かったことを褒めた。

1982年の「よかったらサインくれよ」に、島本から34年越しの返答だ。
「庵野!俺より面白いもの作るんじゃねーっ!!」

立ち直ったホノオだが、サンデー編集部では、この新人に任せることを諦め、原作者をつけて絵だけをやってみないかと提案する。
ホノオが組む原作者とは、「男組」「美味しんぼ」の雁屋哲。
こんな仕事を受けたら「なんだこの新人」と叩かれる。

デビューしてからずっと逆風だったのに、追い風が吹くときは制御できない勢いで吹く。
雁屋哲との仕事。
正直いって怖い。断りたい。答えを出せないまま16巻は終わる。

2016年の読者はこの後の展開を知っている。
島本和彦は1982年に、原作:雁屋哲「風の戦士ダン」なる漫画を連載している。
編集部が用意した高いハードルに、「挑戦させてください」と言うホノオの姿が今後描かれることになる。

今後のアオイホノオは、ホノオ青年が島本和彦という異端に変身するまでの「エピソード3」になる。

「A子さんの恋人」3巻が好き

名前もわからない29歳の登場人物たちがくっつきそうでくっつかなくて…がずっと続くだけの漫画が、僕の好きな物リストの一番上にすっぽりおさまってしまった。

例えるなら、料理人の野菜の千切りを見ているのは気持ちいい。包丁の音とか、テンポとか。

好きな人の語りを聞いているのは、気持ちいい。声の低さといい言葉選びといい、意味が解らなくても心地よくなって少し眠くなるような。
「A子さんの恋人」を読むと、そういう感覚になる。

まず絵がきれい。漫画家の言う「きれいな線」って表現がどうもわからなかったけど、これ見てわかった気がする。
凄まじく上手くて、緻密な絵も描ける人が、あえて最小限の線で描いてある。建物や小物の配置ひとつでも、普通の人には描けない、んだと思う。
テンポも良くて、変に凝らないコマ割りで会話がトン、トン、トンと進んでいく。
その割に話は全く進展しないので、会話や絵に居心地の良さを感じない人にとっては、似たようなやりとりがずーっと続くだけでイライラするかもしれない。

3巻で好きなのは「春の葬式」

美大の先生が亡くなったので告別式にみんなで集まることになった。
世話にはなったけど、それほど悲しいわけでもなく、
みんな慣れない喪服で揃ったのもちょっとイベントっぽくて、同窓会みたいな空気になってくる。

そこには来るはずのない元彼や、ずっと先生に世話になって悲しんでいる友達もいて、何とも言えない空気のまま終わった…と思いきや、って話。

ニューヨークで嫌みな男にふられたことを話していたら、世界中の酔っ払い女たちが集まってきて、みんな仲良く、知らない男に各国語で呪うシーンも実に楽しそうで好き。

DSCN0248 (2)


3巻では過去の出来事がいくつも明かされて、
「この人は過去にこういうことがありました」「こういう食べ物や場所が好きです」
というのがだんだんわかってくる。

LINEのやり取りや時間指定配達の使い方ひとつでも、
「この人は、こういうことしてそう」
と思える箇所がたくさんあって、クスッとさせるかさせないかぐらいの笑いを生む。
このぐらいの温度が居心地いいんだ。




東村アキコ「雪花の虎」3巻レビュー

歴史好きには有名な「上杉謙信女性説」を東村アキコが描く『雪花の虎』。
上杉謙信が女性なのか?を検証する作品ではない。

女なんです!少なくとも、この作品内では!


3巻は、謀反を起こした配下、黒田との戦。
本来指揮をとるはずの兄が病気のため、かわりに女謙信、景虎が戦い、あっさり黒田を生け捕りにする。
「腹を召されよ、黒田殿。」

兄の助けになりたくて戦ったのに、兄は女にも劣る軟弱者で、妹のほうが勇猛だと広まってしまう。

男に生まれていれば、このまま立派な戦国武将コースだ。
だけど女に生まれたばかりに、主になってほしい家臣と、「女らしい」生き方を願う姉との板挟みになる。

ただ華やかだから「女謙信説」を描いたんじゃない。
性の違いが、語りつくされてきた歴史ものに新しいドラマを起こす。

そして何より、かっこいいんです。
「女の大将は嫌か?」

『FLIP-FLAP』や、「漂流」を読みました!


まず今月のキンドルセール本!
掘り出し物感のある一冊「FLIP-FLAP」紹介書きました。
キンドルは専用端末を持ってなくても、パソコンやタブレットに表示させて読めます。ぜひ。

アオシマ書店のレビュー欄に飛ぶよー



角幡唯介「漂流」
活字から離れていたけど、久しぶりに大好きな作家のルポをカバンに入れて持ち歩いた。



一カ月の漂流生活から生き延びた漁師がいた。
当時は「奇跡の生還」ともてはやされたんだけど、
その漁師は何年もたって再び海に出、再開1回目で再び漂流し、消息不明になっていた。

海の恐ろしさを知っていた人がなぜ?
という謎を追いかけるうち、
彼の出身の島が、ちょっと変わった気風であることがわかってくる。

北朝鮮拉致説を唱えるのは仲間由紀恵のおじいちゃん。
過去のものと思っていた事件が、バシッと今と繋がる感じに驚いた。

と、題材は魅力的なんだけど途中からちょっとだれてきて…。
冒頭だけ紹介してレビューすることもできるんだけど、
結局は前の「アグルーカの行方」が大大大傑作なのであっちを買ってほしいという結論になった。




13日はPS4で「パックマンCE2」配信なので、そちらにかかりっきりの予定。デッドプールのDVDも観る。
↑