「A子さんの恋人」3巻が好き

名前もわからない29歳の登場人物たちがくっつきそうでくっつかなくて…がずっと続くだけの漫画が、僕の好きな物リストの一番上にすっぽりおさまってしまった。

例えるなら、料理人の野菜の千切りを見ているのは気持ちいい。包丁の音とか、テンポとか。

好きな人の語りを聞いているのは、気持ちいい。声の低さといい言葉選びといい、意味が解らなくても心地よくなって少し眠くなるような。
「A子さんの恋人」を読むと、そういう感覚になる。

まず絵がきれい。漫画家の言う「きれいな線」って表現がどうもわからなかったけど、これ見てわかった気がする。
凄まじく上手くて、緻密な絵も描ける人が、あえて最小限の線で描いてある。建物や小物の配置ひとつでも、普通の人には描けない、んだと思う。
テンポも良くて、変に凝らないコマ割りで会話がトン、トン、トンと進んでいく。
その割に話は全く進展しないので、会話や絵に居心地の良さを感じない人にとっては、似たようなやりとりがずーっと続くだけでイライラするかもしれない。

3巻で好きなのは「春の葬式」

美大の先生が亡くなったので告別式にみんなで集まることになった。
世話にはなったけど、それほど悲しいわけでもなく、
みんな慣れない喪服で揃ったのもちょっとイベントっぽくて、同窓会みたいな空気になってくる。

そこには来るはずのない元彼や、ずっと先生に世話になって悲しんでいる友達もいて、何とも言えない空気のまま終わった…と思いきや、って話。

ニューヨークで嫌みな男にふられたことを話していたら、世界中の酔っ払い女たちが集まってきて、みんな仲良く、知らない男に各国語で呪うシーンも実に楽しそうで好き。

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3巻では過去の出来事がいくつも明かされて、
「この人は過去にこういうことがありました」「こういう食べ物や場所が好きです」
というのがだんだんわかってくる。

LINEのやり取りや時間指定配達の使い方ひとつでも、
「この人は、こういうことしてそう」
と思える箇所がたくさんあって、クスッとさせるかさせないかぐらいの笑いを生む。
このぐらいの温度が居心地いいんだ。




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