日本の○○を外国人絶賛!…よりちょっと深い話 高野秀行「移民の宴」

「外国人が日本を絶賛!」
「外国人が日本人に激怒!」
どちらかに二極化した報道に気持ちの悪さを感じている人に読んでほしい。

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「外国人の食生活を聞きに行けば本のネタになるし、旨い酒にもありつけるかも」
ぐらいの思い付きから始まっていつの間にか生い立ちや宗教の話に発展し、取材期間中に不幸にも東日本大震災が起こったことで、本としてはおそらく作者が思っていた以上に深く面白くなった一冊。

持ち物全てが流されても明るくふるまう南三陸町のフィリピン人女性たち、
日本で中古車販売で稼いだことと、困ってる人を助けないといけないという信仰心で日本にかけつけたパキスタン人、
ネットでは不思議ニュースとして取り上げられた、巨大仏像を日本に送ろうとしたタイ人グループのことも書いてある。

これを読んで日本の外交政策がどうこうとか、歴史や宗教問題について考えようといった目的があるわけじゃない。
「ただ面白そうだから聞いてみた」
という出発点が、結果的に読みやすさと面白さにつながっている。


1日何度もお祈りをして、豚肉は一切食べられないので日本の食事はどこに肉が潜んでいるかわからなくて大変です…というムスリムの人がいたら、まず彼らがどんな人か考える前に
「なんかニュースでテロの報道で映ってた、関わり合いになりたくない人種だ」と考えてしまう。

だけどこの本では、彼らは獣肉を避けて「寿司通」になることが多いことを書き、最後には日本人の作者が「本マグロよりメバチマグロの方がいいんじゃない?」と教えてもらう。
このシーンだけでも面白いし、「わけのわからない人たち」から「寿司好きかもしれない人たち」ぐらいに親しみやすさはアップする。

「日本料理は繊細で、シンプルに見えても職人の技術とかは世界トップクラスなんでしょ?」
というイメージも気持ちよく消えていった。
日本料理のレベルが低いということじゃなくて、世界中に凝った料理があって、それを習得した料理人がいる。

外国人が
「日本料理は魚を丸焼きするだけで簡単でいいよね」
といったら、
「そうか?本当に和食知ってるのか?」
と思っちゃいそうだけど、この本に登場するイラン人のダンサー、ミーナさんがふるまう家庭料理は仕込みだけで17時間かかる。

ある程度作り置きする文化があるとはいえ、食材選びも手間も相当にこだわっている。
そして、アイドル的で明るいベリーダンサーのミーナは家族を亡くしたばかりだったということを後で知る。

「地震の被害で何もかも流されたけど、一番美しい私だけは残った」
という力強いジョークで笑ったフィリピンのおばちゃんといい、みんな影で泣いたこともあるはずなのに、強い!

それに、仲間と宗教の力って凄い!
宗教というだけで日本だと、うさんくさいイメージにつながりがちだけど、お寺という心の拠りどころがあって、お祈りすることで頑張れた人がこんなにいるのかと、羨ましいとすら思えた。

「関西では料理にこんなものをかける!」
という情報バラエティーを観るのと同じ感覚で、
「日系ブラジル人の醤油やシャンプーは濃い!」
なんていうトリビアがいくつも出てきて、読後には自分の考え方がちょっと広がったような気になる。いい本でした。




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