「動物翻訳家」は動物好きならだれでも共感できるしっかりした一冊。

片野ゆか「動物翻訳家」を読みました。

動物園の飼育員と動物たちの交流を記録した一冊。
WIN_20151006_100958.jpg


珍しい動物や感動的なエピソードを押し出さない、地に足のついた一冊でした。
愛犬家で、「ゼロ!」やコミック化した「犬部!」など、犬の処分に向き合う人たちをずっと追ってきた作者の、珍しく犬が出てこない本です。

用心深いペンギンや独自の社会を形成するチンパンジーも面白かったけど、アフリカハゲコウという巨大な鳥を檻なしで飼育して、飛ぶ姿を見せる話が面白かった。
その章で出てくる
「動物を擬人化させたものではない、動物本来の動きのショーを見せたい」
という考えにも深く納得してしまった。

動物が玉乗りをしたり、おもしろいポーズをしたりといった、人間がやりそうなことをやらせるんじゃなくて、
ゾウだったらその大きさや鳴き声。
犬や馬なら走る速さと美しさ。
猿なら木を伝う上手さ。

そういう動物本来の姿をそのまま見せるのが一番魅力的で、動物にもストレスにならないんじゃないか。
言われてみれば当たり前で、なんで今までそんなことに気づかなかったんだろうと思います。
その中で最も難しい「鳥が飛ぶ姿を見せたい」という飼育員の奮闘が描かれます。

また、キリンの飼育員は、キリンの妊娠がわかったとき、あえてみんなに公表したいと申し出ます。
たいてい、子供が生まれてから「おめでたいニュース」として発表されることの多い動物の赤ちゃん。それも日本の動物園では絶滅の危機にあるキリン。
その赤ちゃんが生まれるかもしれない。

それをあえて妊娠段階で公表して、もし悲しい結果になったらみんなで悲しみ、元気な子が生まれたらみんなで祝福しよう。
こんなことを言い出せるのも、飼育員と動物との言葉にできない繋がりがあるからだけど、キリンの神経質さと
体型を見るとこっちまでハラハラする。

日本の動物園に常につきまとう、狭さと資金問題。
中には、ストレスから柵をなめたり噛んだり、本来の野生動物ではしないような行動をとる動物も多い。
そんな動物園のネガティブな一面も認めながら、それでも飼育員は、できる中で少しでも動物たちと心を通わせようと日夜頑張っている。

写真はモノクロだけど、キリンってこんなにきれいでユーモラスだったっけ。
ペンギンはこんなに堂々としてたっけ。
間違いなく動物園にもう一度行ってみたくなる一冊です。最後に行ったのはいつだったか…




関連記事

コメント


トラックバック

↑