高野秀行「恋するソマリア」いきなり会心の面白さ!

この作者本来の味が戻ってきた!

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高野秀行作品は昔から面白かったんだけど、内容はといえば、海外で幻のUMAを追いかけて地元民に騙されて命からがら帰ってくるとかで、どうしてもノンフィクション界ではイロモノ的存在でした。
それが2、3年前から少しシリアスな作風になって、
付近では年中戦闘をしているのに、そのそばで独自のシステムで平和を維持している「ソマリランド」という場所があることを書いた本で賞をもらい、一気に売り上げと評価ともに上げて絶好調なのです。

ただ、長年のファンとしては昔の「面白さ」第一の本はもうなくなってしまうのか…と不安だったんです。
今の研究テーマは「実は海外にも存在する、日本式納豆を食べる国」らしいので、次回作はまた変化球かもしれませんが。

そこに新作「恋するソマリア」!
相変わらず謎の多い国「ソマリランド」で認められたい、おもてなし抜きの普段の生活が知りたい、というノンフィクションです。ソマリアという題名があるだけで重さを感じて敬遠されそうだけど、とても読みやすい。

外国人ですら見慣れない地元住民にどうすれば受け入れられるのか、という課題に
「日本の中古車販売作戦」や「絶対ウケるソマリの氏族ギャグ」などを駆使し、
部外者にとっては軍事施設より入ることが困難な「女だけの台所」にまで入ってしまう。

これまで多数の言語を学び、ときには文字のない少数言語(書かずに、口から口へと伝えるだけなので、テキストもない)まで勉強した作者が、
ソマリ語は「空前絶後の難易度」と評したのには笑った。

終盤には、悪い役人にだまされて、装甲車で危険地域に連れて行かれることになる。
「今すぐ降ろせ!飛行機を予約してあるんだ!」
と詰め寄っても、
「ここはアルジャジーラが潜伏している。真っ先に外国人ジャーナリストは狙われるだろうねえ」
「ぐぬぬぬ…」
という具合の展開。(それからの、悪役の行動も必見)

しかしこれは、命を危険にさらすことになるが、最も見ることの難しいソマリの人々の日常的な姿を記録するチャンスでもあった。
ここで経験したカルチャーショックと、作者の凄まじい悪運の強さは、ぜひ読んで確認してほしい。

よりよく理解するなら、前作的存在の「謎の独立国家ソマリランド」を読んでからのほうがいいんだけど、恋するソマリア一冊だけでも大丈夫です。


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