高野秀行「イスラム飲酒紀行」のパワーに脱帽




イスラム飲酒紀行 (講談社文庫)


久しぶりにこんなパワーのあるノンフィクションを読んだ。
酒を飲まないと一日が終わった気がしないというアル中寸前のような作家が、ネガティブなイメージと共に報道されがちなカタール、イラン、バングラディシュなどで、ご禁制の酒を求める旅。
苦しい生活を送っている人も出てくるのに、なぜか読んだあとには「世界は広くて面白い」というポジティブな感想が出てくる。
同行するのはフライデーに雇われていたこともある隠し撮り名人のカメラマン。美しい風景だろうがドラッグをやっている若者だろうが撮りまくり!

酒を持っているのを見つかれば即懲役になる街で、自分と同類の酒飲みの匂いを嗅ぎ当てる。
酒飲みの嗅覚というのはたいしたもので、最初は
「酒?そんなものはゆるされない!」
と言っていた人が、別れ際になると
「さっきの話だけどさ…」
という具合に、厳しい戒律の元でこっそり呑める場所があることを教えてくれる。

夜のオアシスで行われている酒宴に参加して、オアシスの水で割った酒を飲む。
出会ったばかりの酒好きたちと意気投合する夢のような一夜をすごすが、朝になったらオアシスの神秘性はなくなり、単に馬が足を洗う池になっていた…。
なんて、昔話でタヌキに騙された人みたいなエピソードを命がけでやっている。

内戦状態の街で「ここなら酒がある」と案内された場所は秘密の売春クラブだった。
女には興味はないが、危険な街でも料理と酒のためなら飛び込む。

決して外の世界に出ることのない、幻の地酒や酒の肴を探してどんどん地元の人と打ち解けていく。

一歩間違えれば国際問題になるんじゃないかという危険な旅を、好奇心と酒好きパワーで突っ走る。そしてイスラムの人たちの人間的な部分を知って、読む前より確実に彼らに対する好感度は上がる。
(逆に作者たちへの好感度は下がりっぱなしだ。後半はほとんど「迷惑なガイジン」以外の何物でもない)

ノンフィクションであって型破りなエンターテイメント。これですよ。これ。無理を承知で言うけど、こういう本がもっと売れて翻訳されて海外の本屋に並ばないものか。
関連記事

コメント


トラックバック

↑