歩くエッセイスト宮田珠己の「ときどき意味もなく~」「だいたい四国八十八ヶ所」

この表紙は何度見ても最高だ。

DSCF1505 (372x400)

宮田珠己という、歩くことが好きなエッセイストがいる。
この人の、
「ときどき意味もなくずんずん歩く」
「なみのひとなみのいとなみ」
2作のタイトルと表紙の絵は秀逸だと思う。
イラストのゆるさ、ちょっと曲がった題字。全力で緩くやってやるぞ、という気持ちが見える。




僕が読んだのは「ときどき~」だけど、
北海道の島を気まぐれに一周してウニをもらったり、川遊びをしたり海外でジェットコースターに挑戦したりするエッセイ。
ほのぼの系紀行文に見せかけて、なんとか読者を楽しませてやろう、一行ごとに笑いをとってやろうという関西人らしいサービス精神が溢れていました。
これが、合う人ならクスクス笑いながら楽しめるんだろうけど、
個人的には笑いをさそっている部分にうまくのれず、
「いい人そうだけどなんか合わない」と感じてしまって、その後しばらく宮田作品を読むことはありませんでした。



ところが最近「だいたい四国八十八か所」を読んでびっくり。
笑いの要素を控えめにして、いい感じにテンションが抑えられた結果、作者の素の性格の良さや国内旅行の素朴な味わいが浮き出て、実に心地よい一冊になっていました。

信心のない、笠だけお遍路さんになった作者がテクテクと四国を歩く。
山道の様子とか寺の雰囲気を描いていて、たまに変わった人やきれいな景色が出てくる。
この淡々とした感じが
「本当の国内の歩き旅っぽい!」と思える。

日常から半歩だけ外に出て楽しそうにしている、椎名誠とか釣りバカ日誌のようだ。
いい具合の脱力感で、文章も読みやすいから実は大変な旅をしているのに重苦しさがない。
お遍路というより何となく四国一周してみたかっただけで、寺に入っても手を洗うのを忘れたり、お賽銭が一円だったり(笑)、真剣に取り組んでいる人が見れば怒られそうなことをしているのに、あんまり嫌な感じがしないのも特徴だ。

変わった由来の寺ばかりに興味を示したり、ルートを変えて突然四万十川で川下りしたりと、信心深くないからこそ「面白そうな展開」には素直に飛びつく。
面白そうかどうかが全て。
そこが文化財だろうと単なる変わったお地蔵さんだろうと面白そうなら吸い寄せられてしまう。面白そうじゃなければ途中でやめてもいいかな、と思っている。

途中で、日本語がわからないことを理由に宿泊を一度断られたという外国人お遍路が登場する。
作者にしてみれば、もともと遍路にも四国にも思い入れはない。
別にこの外国人が苦労して宿を通り過ぎてしまい、四国の評判が落ちようとどうでもいいことなんだけど、それでも同じ歩き旅仲間として、できるだけ親切にしてあげようと工夫する。

何だか四国出身者としてお礼を言いたい気分になった。
あまり期待して読むような本じゃないけど、なんとなく取っておいてなんとなく読み返したくなる。実は静かな傑作なんじゃないか?と思っている。まったり旅気分を味わいたいときに読もう。

これには、旅の楽しさと、退屈さがちゃんと入っている。
関連記事

コメント


トラックバック

↑