たまにはいいもん食おう。「イベリコ豚を買いに」を読んだ

「イベリコ豚を買いに」
というよりも、
「買ったもののどうしよう」
からが長い本でした。

「イベリコ豚ってよく聞くけど、本当はどんな豚なんだろう」
という何気ない疑問から、スペインへの取材でわかった本物のイベリコ豚の価値や、実際に豚を買いつけて、日本で料理方法を考えて売るまでを記録した一冊。

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イベリコ豚というと、スペインの高級豚でドングリを食っているという宣伝文句で日本に大量に輸入されているが、実際はどんなものなのか。
まず、日本で売っている「イベリコ豚」はドングリ食ってない!あいつら、ドングリ食ってないよ!

どんぐりとハーブの中で放牧されるのは、イベリコ豚の中の選ばれた豚だけ。
どんぐりとハーブを食べて育つベジョータと呼ばれる豚を育てるには
「豚一匹のために、1トン以上のどんぐりと2~3ヘクタールの樫の森が必要」
で、凄まじい手間とコストがかかります。平均的日本人の家よりずっと広い敷地で育つ彼らは自信に満ち溢れた態度で、隣のサラブレッドとイベリコ豚がにらみ合うと、サラブレッドのほうがすごすごと帰っていくそうです(ここはちょっと信じがたい)

ドングリを食べたイベリコ豚を生ハムで食べると、肉からほんのりナッツの風味がして、他の肉には戻れないほどだそうです。
ただ、本物のイベリコは生ハムにすれば別格の旨さなんだけど、
「トンカツとかにすれば、格安の豚でも旨いことは旨い」
のも確かだという。

日本で買えるハムは生産効率を重視して調味液を注射した肉が多いけど、本物にこだわらなければ旨いことは旨い。
「パック入りのロースハムを買うと、時々、にこごりみたいなとろっとした液が固まっているでしょう、あれ、肉汁じゃないんですか」
「いやいや、あれは肉に閉じ込めきれなかった液体です」
と、否定的な会話はあるけど、まずいとは一言も書いてない。

作者はスペインからイベリコ豚を買い付け、日本で売ろうとするんだけど、スペイン風の生ハムにしたら日本人にとっては脂肪が多く抵抗感がある。
どう料理すればイベリコの風味を出しつつ、日本人にも食べてもらえるのかの試行錯誤が面白い。

豚バラ肉ともやしだけの焼きそばがうまそう。

まず、イベリコ豚のバラ肉をスライスし、フライパンでこんがり焼く。脂が多く出てきたら、キッチンペーパーで拭き取って、適量を残す。こんがりと焼けたバラ肉は別皿に取っておく。
 次に袋の中から蒸し麺を取り出して、皿に置き、上から日本酒を振りかける。麺ひとつに対して、おちょこ一杯分の酒が目安である。振りかけたらラップで覆わずにレンジへ入れ、2分間、チンをする。そうして、麺がほぐれたらイベリコ豚の脂が残ったフライパンに投入し、じっくり焼く。フライパンは揺り動かさなくていい。焦げ目がつくくらいまでしっかり焼く。
 小麦粉は脂と出会って焦げるくらいまで焼けた時、香ばしさが生まれる。


最終的に完成した料理は、スペインの最高級豚を扱う社長に認められるまでになるんだけど、この社長がとにかく熱い男で、
「イベリコ豚という文化を意地でも守るんだ」
という情熱で平均的なスペイン人よりずっと長時間の仕事をバリバリこなす。

まっすぐな思いの生産者と、その価値を認めて金を出す消費者がいないと、
「文化」なんてかんたんに滅びてしまう。
滅びなくても、いつの間にか安価な偽物に取って代わられてしまう。
食品だけの話じゃない。

豚トリビアから、世界の経済事情、ビジネス論、料理の話、国と文化の話と次々に違う読み方ができます。


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コメント

児斗玉文章 #-

畜肉の値段には当然トータルの餌代がかぶさってくるわけですが、いやはや流石に音に聞くイベリコ豚、なんとも贅沢な育てられ方をしているものですね。
いかん…腹が減ってきた。

2014年05月22日(木) 19時23分 | URL | 編集


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