末井昭「自殺」 パチンコ雑誌編集者の癒しの書!

このタイトルです。

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自殺

帯のおかげでだいぶ手に取りやすくなってます。

小説でこの題材だったらすごく深刻な読み物になるか、逆にミステリーの味付けなどで軽く扱うか、どっちにしろ特別な扱いをしてしまいそうだけど、このエッセー集は作者とテーマの距離感が独特です。
自殺を「ごくふつうにあること」としてふつうに話をしているので、読む方も最初はとまどいながら、だんだん作者の語りにはまっていきます。

末井さんは、少年時代に母親がダイナマイトで爆死自殺した壮絶な過去の持ち主。

小さな村で、もう治る見込みのない結核と診断されて家に帰ってきた母が、若い男といっしょに鉱山で使うダイナマイトに火を付けて心中した。
それから子供はよく山に行くようになり、遠くに行くことに憧れるようになる。
それが東京に出ることにつながって、たくさんの人や仕事との出会いになった。

母は爆発して、僕や弟を村から吹き飛ばしてくれたのかもしれません。


ここを読んだ時点で、とんでもない本を見つけてしまった、というかとんでもない作者を見つけてしまったという気がしたわけです。
そのあとも株で多額の借金を背負い、うつ状態で仕事を抜け出してパチンコをしているうちにパチンコ依存症になり、この感覚を共有したい人がいるんじゃないかとの思いつきから「パチンコ必勝ガイド」を創刊するとか……
それで人生が大逆転したわけでもなく…今でも多額の借金を毎月ちょっとづつ返しているとか…。

いろいろあった人なのに、末井さんには、いろいろあった人特有の偉そうな感じがないので読みやすいです。
ギャンブル雑誌を創刊して、社会のウラもオモテも知っている人なのに、ずっとていねいな語り口調でおだやか~に話が続いていく。
「みんなも悩みはあるだろうけど、俺の子供時代はもっと苦労したんだぞ!」
って暑苦しく語りかけるような人じゃないので、精神的にしんどい時でも読みやすいと思う。
天才なのか優しいのか。偉大なのかダメ人間なのか。独特の人柄と強烈なエピソードの連続に翻弄されて、どんどん読んじゃう。

借金があるのにホームレスの人についついお金を貸しちゃうとか、パチンコ依存症でもお金で孤独が癒されたんだからいいじゃんとか、よく愛人の話が出てくるところとか、とことんダメなエピソードも出てくるので、そこでどうしてもイライラする人は読めないかもしれないけど、個人的には「こんなタイプの人は初めてだぞ…」という興味の方が大きかったです。

人間の業を全部肯定しちゃうような癒しのオーラに包まれてながら、青木ヶ原樹海を調査している早野さんへのインタビューや「こわれ者の祭典」というイベントを主催している月乃光司さんの苦しかった青春時代など、思わず真剣に読んでしまう部分もあり。

意外と、苦しいときにすっと気を楽にしてくれるのは、こういう本なのかもしれない。面白いです!




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