今日の小説「癌だましい」山内令南

「癌だましい」という小説を読んだ。
作者自身が癌と闘いながら書きあげ、受賞して作家デビューした直後に亡くなったという、小説周辺のエピソードにひかれて読んだんだけど、目のさめるような強烈な内容だった。

食道がんをわずらった主人公の中年女性が、すべての治療を拒否して、ひたすら汚い部屋でコンビニで買いこんだものを食い漁りながら孤独死に近付いていく。
病気になる前から、態度は悪く物覚えは悪く口が悪く容姿も醜い主人公には、簡単には感情移入できない。介護施設での仕事仲間に悪口を言われても気にせず、痴呆老人に対する態度も容赦無い。

これまでの人生で愛情を注がれた記憶といえば、祖母にお菓子を作ってもらっていたことだけで、それ以外は母の命日すら忘れている。それでいて、料理に関することだけは徹底的にこだわる。

これは闘病小説といっていいのか?
とろけるプリンを少しづつ嚥下しながら、「クソッ、痛え」とかうめいてるだけなのに、
「むしろここまでくればかっこいい」と思ってしまった俺は異常か?

恋人も家族も友人も誰もいなくて、みんなに嫌われて、突然末期癌を宣告されて…不幸が束になってかかってきても、この主人公は食ってる時だけが幸せで、そこだけは揺るがなかった。
これを本当に同じ病気の人が書いたことに感動したし、とろけるプリンを食おうとしたり噴き戻したりするシーンで人生について考えてしまうという、強烈な小説だった。
賛否両論あるだろうけど、良かった!


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