柳澤健「1985年のクラッシュ・ギャルズ」

柳澤健「1985年のクラッシュ・ギャルズ」

1980年代のゴールデンタイムに放映されていた女子プロレスと、その中心にいた長与千種(ちぐさ)・ライオネス飛鳥によるコンビ「クラッシュ・ギャルズ」の活躍と、女子プロ人気の終焉までをまとめた一冊。

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前回のボディビル本に続く、熱いノンフィクションレビュー第二弾です。
昔の女子プロレスラーの話ということで、かなり読む人が限定されそうですが、ひとつのブームが始まって終わるまでを記録した一冊として、また当時の女子プロレスラーはアイドルのような活動もしているので、80年代アイドルの「親衛隊」の仕組みなど、特殊な世界の話もなかなか面白かった。

まず長与千種という人の生い立ちが語られるんだけど、名前だけでもう辛い。
父親が競艇にしか興味がなくて、1着2着3着にあやかって長女は「一二三(ひふみ)」。
次女は一番配当のいい千円の舟券の種になるように「千種」。
競艇選手に育てる男が生まれることを望まれていたせいか、二人とも、男でも違和感のない名前だ。
貧困と孤独にまみれた少女時代を過ごすが、貧しさは千種をタフな女に変えていく。

中学でソフトボール部に入ると、後輩の女子生徒が千種のウワサをしている。
同級生の仲良しグループにも入れない千種を、後輩たちは
「男っぽい」「サバサバしてる」「かっこいい」と憧れの目で見て、チームメイトと何を話していたかで妄想を膨らませている様子まである。

やがてプロレスラーになった千種は、ライバル関係にあったライオネス飛鳥とコンビを組み、クラッシュ・ギャルズを結成。
それまで、クラッシュ・ギャルズほど「少女に支持された、戦う少女たち」はいなかった。
繰り出す技のひとつひとつに声援があがり、悪役のダンプ松本が凶器を使い、押さえつけられて髪の毛を刈られると、ファンも一緒に泣き叫ぶ。
激しい戦いを繰り広げつつも、千種の表情や動きのひとつひとつがファンの心理を操作していく。

と、ここで終わればそれはそれでいいんだけど、この本は2011年の女子プロレスまで続く。
ご存じの通り、女子プロレスというか格闘技全体が昔のように話題になることは少ない。
「プロレスなんて観るんじゃありません」という親に反抗して、泊まりがけで選手の追っかけをしていた若者が、いつの間にか家族をつくり、他のたいせつなものを見つけていく。
クラッシュ・ギャルズ再結成!とくれば当時のファンは集まるけど、それはもはや懐メロ的な扱いでしかない。

この「ブームが去っていく感じ」がなんとも切ない。

どんなに人々を熱狂させた音楽もゲームもテレビも、すぐに使い捨てられ、懐メロ化して、たまにリメイクされて話題作りになる程度の存在でしかない。
熱狂する人々を見て、うらやましいなあと思ったり、よくやるなあと思ったり。


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