増田晶文「果てなき渇望」でボディビルダーの内面に迫る

夏を前に、ちょっと暑苦しい本を読みました。
増田晶文「果てなき渇望」はボディビルという特殊なスポーツと、それに魅せられた男女の姿を取材したルポです。
文庫化されたのは最近だけど元は10年以上前のものなので、ドラッグ関係の話題は古いけど、一般人でありボディビルダーである男女の姿がおもしろい。

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昼間は勤め人をしながら筋肉をつける男性と、子供のころから体格に恵まれ、女らしさという言葉に悩まされてきた女性。
2人に共通するのは、非常にストイックなところ。テレビやマンガのマッチョキャラが見せるような筋肉バカのイメージは無い。

この本を読んで知ったのは、ボディビルが何の得にもならないということです。
金はかかるし、体に悪いし、トレーニングは大変。日焼けをしないと筋肉の陰影が見えづらいため、日焼けサロン代も馬鹿にならないし、焼きこんだ肌は近くで見ると荒れていて、本来ジムで目指すような健康的な体とは違うらしい。

じゃあ、なぜボディビルという競技を選んだのか。
トレーナーは「ボディビルは誰にでもできる」と強調する。
正しいトレーニングをすること。本気でやること。継続すること。この3つを守るだけで、誰でも凄い体になれる。

トレーニングをしただけ筋肉が付く。
怠けたぶんだけ筋肉が減る。
最後まで自分との勝負だから面白い。

コンテストの勝敗も、控え室で服を脱いだ時点でだいたいの勝敗がわかってしまう。
努力してない奴が、最後に奇跡的な逆転をするなんて展開にはならない。
大げさに言えば「それまでどう生きてきたか」がコンテストの勝敗に直結する。

宣伝文句では「命や家族と引き換えでも筋肉が欲しい」という病的な人が出てくるように煽ってますし、実際命の危険を冒してまでも人間のワクを越えたモンスターに近づきたい、という人も出てきますが、その人はメインじゃない。
主役はあくまでも、筋肉でコンプレックスを乗り越えて、より理想的な自分に近づこうとした、ごく普通の男女ふたり。
ふたりとも普通の体格の人の延長線にいると思ったし、普通であるところが面白かった。映像で見ると好みは分かれそうだけど、文章だからビルダーの肉体が苦手な人でも読めますよ。



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