難病系女子、大野更紗「困ってるひと」を読んだ。

嫌な言い方になるけど、本や映画の世界では「難病モノ」は常に需要がある。

自分と同世代の人が突然倒れたと聞けばドキッとするし(ノンフィクションの闘病記のタイトルに年齢が入っているものが多いのは、そういう効果を狙ってるんじゃないかと思う)
避けられない家族の別れに対する心の準備とか、日々普通に生活できているありがたみを感じられるとか、「病気の話」を読めば誰でも不安になったり安心したりする。
特に若い女性の闘病記は、それだけで人を集めることができる。

だけど、「私の体験をただの闘病記というくくりで終わらせてたまるか!」と気を吐いた女子大生がいた。
難病系女子による難病系エンタメ「困ってるひと」は難民の救助活動をするはずだった作者が突然の難病を発症し、全身の激痛で日常生活すらままならなくなるという話だ。

そして、作品の監修にあたるのは、僕をノンフィクション好きにした張本人であり、世界を股にかけて未知動物探しを続ける現代のドンキホーテおじさん、高野秀行!
この人は、「片側はガケ、片側は山で身動きのできない一本道にいたら、前から猛牛が突進してきた」など、悲惨なのになぜか笑ってしまうエピソードを多数持っている。

この異色タッグは、イチゴと大福のようなナイスマッチを見せる。
結果として、どん底の環境にいるのに常に文体は軽妙という、珍しい本が出来上がった。

好感を持ったのは、大野さんの恐るべき真面目さ。
福祉制度の在り方とか、何気ない一言で悔しい思いをしたこととか、納得できないことが雪崩のように襲ってきて、本当は泣きわめいて助けを求めたい心境なんだろうけど、それを直接書かずに、つらかった出来事ひとつひとつに何とかギャグを入れこむ。
「もう強がらなくてもいいって!キミ、顔では笑ってるけど、どう見ても死にそうじゃないか!」
と思ったのは自分だけじゃないはず。

面倒を見てくれた医者に対する感謝の気持ちが感じられない、という理由で気に入らなかったという感想も見られるが、実は本の中に書ききれなかっただけで、彼女は世話してくれた医者の名前を自分のペンネームにしているほど担当医たちに感謝しているらしい。

そんな大野更紗、この本を書いたあとで両親の住む実家までが東日本大震災で被災。
ますます理不尽にさらされるが、それでも、自分以外の「困ってるひと」を救うために現在も活動中。


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