2012年最後の読書「空白の五マイル」

チベット奥地のツアンポー峡谷は、現在最後の「探検」ができる場所だった。
大昔の探検家が残した、大滝を見たという報告があるくらいで、本当はどうなっているのかはっきりしていない秘境。
地理上の問題や中国の監視の目などが重なり、奇跡的に残された地図上の最後の空白。
わずか5マイルの空白にはどんな風景があるのか。
開高健ノンフィクション賞受賞作。



2度にわたる、作者のツアンポー峡谷への冒険が書かれています。
1回目は就職間近の時期に。2回目は勤めていた新聞社を辞めた直後に。

1回目は純粋な冒険物語として楽しめて、2回目の探検では数年間で変わってしまったチベットの情景や徐々に迫ってくる飢えと寒さの恐怖など、よりシリアスに読ませる。
同じ場所でも、たった数年間でそこにいる人々も作者の内面も変わっているので違う見方になるのが面白い。
たいていこの手のノンフィクションは、文章は荒くても内容でひきつけるタイプが多いけど、新聞記者としての勤務経験があるせいか文章がキッチリ、カッチリしていて、ハードボイルド小説のよう。山場になるカヌーでの激流下りの描写はかなりの迫力。

冒険することに特別な意味はない。
たとえば「日本の若者はもっと世界に目を向けよ」などといったメッセージも一切なく、ただただ行ってみたいから行っただけ、とスタンスもシンプル。
この手のジャンルを読んだことの無い人でも単純に楽しめるかもしれない。
なぜこんなことをするのか全く理解できないかもしれない。
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