「光圀伝」をやっつけた

冲方丁「光圀伝」をどうにかこうにかやっつけた。
読書は楽しむもので、やっつけた、という言い方はどうかと思うんだけど、後半の重さが半端じゃなくて…
つい「読み切った」というより「やっつけた」という言い方になってしまう。

冲方先生には前作「天地明察」で惚れ込んでしまった。元々ライトノベル出身の作者らしい、魅力的なキャラクターで読者を引っ張り込み、キャラによってストーリーを動かすやり方。それに歴史小説ならではの深みがうまい具合にミックスされた快作だった。

光圀伝でも、前半の光圀少年が成長する話は読んでいてものすごく面白い。
体力でも詩歌の腕前でも人並み外れた光圀が身分を隠して街へ出て、悪友たちと遊んだり、生臭坊主たちを論破したりして、「詩で天下を取るか」と調子に乗ったところで本物の実力者と出会い、打ちのめされて、成長していく。
冗談抜きで、これまで読んだ時代小説の中で一番面白いと思った。
粗削りな部分も含めて「時代小説に新風を吹き込んだ」と言われた天地明察よりもずっと完成度が高い。
新しく、面白く、深い、冲方流歴史小説がついに完成しましたぞ! 傑作じゃあ! 傑作じゃあ!

と興奮していたら…途中から光圀様が出世なさるんですよ。
そこから、たくさんの仲間や兄弟とともにどんな事業を成すのかと読み進めていくも、急に話が進まなくなり、まるで前半と後半で別の作品のようになるんです。
決して後半からつまらないわけではないけど、ドラマと違ってかなりリアルな光圀を描いている(らしい)ため、学業を庶民に広めるとか、税制を改めるとか、そんな事業がポンポン進まないのは当たり前で、もう重いのなんの。

重ねて、光圀は当時としてはかなり高齢になるまで生きています。ということは元気なおじいちゃんの姿が描かれているわけで、読んでいるこっちも元気が出る…わけでもない。
長生きするということは、当然周囲の人物が死んでいくということで、かなり多く死別のシーンが出てきます。死んで生まれて、死んで生まれて、を繰り返す話です。

生涯をかけて挑めばどんなことでも成し遂げられるんだというメッセージのこもった天地明察とは対照的に、
生涯をかけて挑んでも思うようにならないことだらけだ。だからといって絶望することはない、ということが書かれた本。

史実とかけ離れた「黄門様」とは違うものを期待して手に取ったはずなのに、いつのまにかドラマの元になったエピソード出てこないかな、と期待している自分がいた。ちょっと疲れたぜ。

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