祝マンガ大賞2018 2位!「我らコンタクティ」は、さかなクンを讃え、嫉妬する話だ

マンガ大賞2018最終結果
大賞 板垣巴留「BEASTARS」(78pt)
2位 森田るい「我らコンタクティ」(68pt)

たまたま見つけて、たまたま手に取った「我らコンタクティ」読んだ直後にこの知らせを見た。大検討の2位!



退屈な会社生活をしているカナエは、小学校時代のさえない同級生かずきと出会う。

子供のころから友達がいなくて浮いていたかずきは、大人になった今、工場で働きながらスペースシャトルを作っている。
好きな映画を、宇宙で、宇宙人に向けて上映する計画の最中だという。
ちょうど会社をやめたいと思っていたカナエは、うまくいけば金になる話だと思ってかずきに近づく。

自分の好きな映画を、永遠に宇宙で上映し続ける、理解できないことへの情熱。
かずきは、言うならば「マツコの知らない世界」「TVチャンピオン」「タモリ倶楽部」のゲストに出てくる一般人だ。
金でも権力でもモテるためでもなく、私はこれをやりたい、これが好きだ、とガッチリ決まっている人。
子供のころはバカにしていたけど、大人になってふと見れば、あいつが実は一番幸せじゃないか!と気づく。あの手の人。

このマンガは、宇宙計画でも映画の話でもなく「さかなクン」の話だ。
やりたいことがあればいい。夢中になっている人は惨めに見えない。

途中でかずきの知り合いの女性は嫉妬し、ある行動に出る。
自分の店を持ち、金をわたしてくる男がいて、休日には買い物をして、
「これをすれば幸せになりそうなもの」を揃えたはずの人が、さえない工場勤務でひとりロケット作りをしているかずきに嫉妬するのだ。

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かずきは周囲をイラつかせ、嫉妬される。「幸せ」は苦労してつかみ取るはずなのに、あいつは始めから幸せだ。
かずきの存在は、幸せを見つけられない人からは「あってはならない」存在なのだ。

金が幸せの基準だったカナエは、
かずきを見て価値観がゆらぎ、「そちら側」の幸福を知る。
最終的に、安定してるけどダラダラ続く人生より、短くてもお金や地位に左右されない夢に身を投じる。

勢いで人生を台無しにしちゃった女かもしれないが、その時間は、楽しかった。連勤明けより給料日より楽しかった。

長編デビュー作らしい、いい感じの荒削りさと完成度で、みんなの手元に打ち上げられた全1巻。
ほどよいボリュームで読みやすい。

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これがマンガの力だ。 吉本浩二「淋しいのはアンタだけじゃない」2巻レビュー

「ぼくら、目で楽しめるマンガが大好きなんです」
聴覚障害を持つ人には、全て目で楽しめるマンガ好きが多い。

彼らと交流するうち、メディアで取り上げられることの少ない「聴覚障害」をテーマに描くことにした作者。

「マンガが好き」
と言ってくれた人たちに託され、症状はマンガにしかできない文字の歪みや、歪んだ擬音で描かれる。

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難聴は、ただ聞こえづらくなるだけじゃない。耳鳴りの苦しみ、孤独。
家庭から会話が消える。人間関係を壊し、人格を変えていく。痛みを、強烈なタッチで描き込む。

想像したことのない聴覚障害の恐怖と、手に負えなくなってくるテーマに、マンガの力で向き合う作者。

2巻で話を聞いた医師は、自身も途中失聴者。
人生の途中で難聴を患った人は、24時間消えない耳鳴りに苦しめられることが多い。
ある日「耳に水が入っているような」感じがして、左右の聴力に差が出てきた。
今でも、常に高音の耳鳴りがして睡眠薬がないと一睡もできない。
「常にマイクのハウリング音が聞こえる」

自暴自棄になって、衝動的にアクセルを踏み込んだ。

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耳鳴りの薬はない。他に気をまぎらわせるしかない。
自分も苦しみを知りながら、患者には治らないことを宣告しないといけない。


聴覚の話と並行して進むのが、取材当時話題になっていた佐村河内守のゴーストライター騒動だ。
ひとりの聴覚障害者に、
「彼は昔からボランティアに来てくれていた。聴こえないはずです」
と証言されて始まった、佐村河内夫妻への取材。

彼はそもそも「完全に聞こえない」とは言ってない。
なのに「聞こえないはずなのに音に反応してる」と笑いものにされた。
難聴に苦しむ人は、記者会見で笑い者にされる姿を自分に重ねた。
笑われている。
疑われている。
あれが自分に対する世間の目なんだ、と。


佐村河内夫妻は、壮絶なバッシングを受けた後なのに、他では話せないことも丁寧に話してくれる。
マスコミの酷い手口も聞いた。ぜひこの人の味方をしたい。

だが、医者の見解と佐村河内の話に一致しない部分が出て、作者をまたも苦しめることになる。

データだと、佐村河内本人の証言よりは聞こえるはずだ。
佐村河内さんは難聴になった時期に兄弟を亡くしている。心因性の難聴だってある。
難聴になるとみんな発声が独特になるのに、なぜあの人だけ自然に話せる。

何が本当で、どう描けばいい。
部外者の自分が、これほど他人のナーバスな部分に踏み込んでいいのか。

佐村河内に都合の悪いことは描きたくない。だけど嘘を描いたら「マンガ」を裏切ることになる。




3回目の佐村河内家での取材。
重い空気の中で、口下手な作者が言葉を選んで質問をする。

漫画の世界も厳しくて、頑張って描いても話題にされなくて、生活もたいへんです。
もし自分にも、難病とか、いじめとか、引きこもり経験とかがあれば注目されるかも、と思ってしまったことがある。

「現代のベートーベン」ともてはやされたとき、そんな思いは、なかったですか。

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コロコロアニキ8号、電子版コロコロ創刊号付き!


青年誌のコーナーに置かれるほうのコロコロ、買ってきた!
興味のないホビー漫画つらいなあとか、苦笑いしてスルーしてたんだけど今回は買った。
四角いボディにみっちりマンガを詰めて、電子書籍で創刊号が読めるコードと、限定ベイブレードが付録。



「ミニ四駆なんかとっくに卒業だ!」レッツ&ゴー中学生編、
母の死、長い低迷。不幸が幸福に転じる、のむらしんぼ「コロコロ創刊伝説」。起死回生の「ハゲ丸」誕生。

そして「あまいぞ!男吾」の「ザ・男子向けマンガ」の風格。
冒頭にお嬢様が啖呵きってケンカに挑むところから始まり、
なぜそうなったのかの経緯が描かれる。
この1話だけで登場人物がどんな性格で、どんな関係性なのかわかる。
40周年記念号で貴重なインタビューがあったり、繊細な絵のマンガも掲載されてる。
各世代に響く子供時代のエピソードがある。
その中で、まさか小学生男女のケンカ漫画が印象に残るとは。ベテラン強し。

あと小田扉の謎プロレス漫画。天山が人間の理性を失って牧場で世話になる。

3月25日の雑記 石黒正数は頑張ってるのに俺ときたらよう


「それでも町は廻っている」最終巻を読んだ。
「その気になれば続けられるけど、一旦このへんで切りましょうか」って余裕。



若手漫画家にとって連載を持つってのは、ハードル競争みたいなもの。
毎回ギリギリの高さを跳ばされて、
順調に見えてもわずかに足がひっかかったら全て台無しになる過酷なもの。
なのにひとりだけ、ハードルを跳びつつ目線は42.195キロ先に合わせていたような、恐るべき長距離ランナー資質。

「それ町」は、主人公の高校三年間の中から、時系列にとらわれずどこか1日を描かれる。

現実の僕らも過去を振り返るとき、時系列順に思い出したりはしない。
つらかったことや、なんでもないのになぜか覚えていることなど、ランダムに思い出すはずだ。
「それ町」を本棚に並べて、てきとうな巻数を読むことは、青春時代を振り返るのに似ている。

作者はそこまで意図したんじゃないにしろ、結果的に革新的な作品になった。
連載10年以上にわたって用意していた伏線を明かしつつ、話ごとの関連性を恐るべき細かさで処理しつつ、表面的にはなんでもないようなエピソードたち。
規格外というか、ファンにとってはこれでも全然「見合った」評価と認知度が与えられてない気がする。
永遠のような一瞬のような物語、とりあえずの一区切り。



チャンピオンに連載している「木曜日のフルット」、最新話はグルメ漫画ネタ「さなのギャンブルめし」だった。
両作品とも似た雰囲気だけど、フルットは週刊連載なので、賞味期限が短い。
「それ町」は5年後に読んでも同じように面白いけど、
今回のフルットは、グルメ漫画界がすごいことになっている「今」の感覚でないと、ちゃんと理解できない。




他にもいろいろ見たものはあるんだけど、春はなんだかんだ忙しくて。
YOUTUBEでいくつか観たVR対応の映像を観た。コリアン・アイドル系のPVがいくつもあって、ちゃんと見るのは初めてだったんだけど、「あー、こりゃアジア系好きの欧米人メロメロだわ」って納得。


「ブレイキング・バッド」シーズン2の、敵を暗殺しようとたくらむシーン良かった。

「バン、バン、バンで終わりだよ!」
「バンバンバン、ってことは3発撃つのか?」
「知らねえよ、2発か3発だ!」
「頭か、胸か?そもそも銃に弾は何発入る?」

慎重派と大胆派のふたりの会話が、笑いを生みつつ、だんだん実行の様子を細かく想像させられて怖くなってくる。

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ウソを描くこともまた真実なり!「コロコロ創刊伝説」2巻レビュー


「コロコロコミックを創った男たちの真実の物語!!」
と煽ってるけど、ここ絶対ウソですよね!?
ってエピソードも多い「コロコロ創刊伝説」2巻。青年誌「コロコロアニキ」に連載中。




80年代前半、子供たちの間では、一度買えばずっと遊べるファミコンが大ブーム。
ブームには乗っていくスタイルのコロコロファミリーは、さっそく「ファミコンロッキー」連載開始。
ハドソンの一社員にすぎなかった若者を「名人」にしたてて大人気に。

「ロッキー」作中の架空の敵と、高橋名人逮捕説。二度にわたる都市伝説化。
レトロゲームファンには興味深い巻だ。


資料として読むには明らかなウソ…演出も多い。
ガンダム人気でコミックボンボンが追い上げきた!
編集者もガンダムに襲われるー!!
「ハッ!夢か…」

30年以上前の他人の夢をなぜ描けるのだ・・・

でも、真実を描いてないじゃないか、とは思わない。
むしろ、当時のコロコロの根っこにあった
「マンガは何でもあり」
って思想は真実で、そこはブレてないんだなあ、と感動する。


本当はもっと深刻に悩んだだろうし、ウェットな漫画になってもおかしくないのに、
「老化も貧乏もネタにして復活してやるぜ!」
と還暦男が虚勢を張る。
「ファミコンロッキー」が子供相手に全力でウソをついたときのように。

「マンガは熱さが第一で、読者に元気を与えるもの」
の精神に基づいて描かれた、コロコロコミックスの新作だ。

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