「ダメージ1」はわからんが、「気温1度」はわかる。「インパクト・ウインター」レビュー

昔流行った学園生活アドベンチャーでは、
「恋愛もせず平凡に卒業」がバッドエンド扱いになったりした。

こちらは、生きてさえいればいい。
「インパクト・ウインター」は荒廃した地球で、教会に避難した5人が30日を耐えるゲーム。

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非力なメンバーを代表して、外からアイテムを持ち帰るのがプレイヤーの役割だ。
チュートリアルは一気に説明されてわからんし(2週目だと理解できる)外は雪で真っ白だし途方にくれる。
その間も食料はなくなっていく。

寒さと疲れが想像できるのがつらい。
子供のころ、ドラクエで感動したとか、FFのセリフ良かったとか、キャラクターに共感した人はいても、
「残りHP1」になるたびにリアルな「ひん死」の人を想像して胸を痛めたりはしない。
「ダメージ10」が現実世界で何なのかもわからない。

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だけど、気温5度、たき火がいよいよ消えようとしている教会に閉じ込められて、水がなくて体力が落ちてきた。
これは想像できる!
「みんな震えてるんだ!状況を変えるには自分が動くしかない!」

と、ずんずかずんずか雪中行軍。
体力がどんどん落ちていく中で、雪に埋もれた建物を見つける。
廃墟探索のスリルと、大量のアイテムを見つけた瞬間がたまらない。

少ないバックパックに、水、薬、電子部品、スペースをとるけど何かありそうな本やレコード。
これらを持ち帰り、食ったり燃やしたりして命をつなぐ。

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料理が得意なウェンディには、食材を渡せば「仕事」ができる。
わずかに空腹をまぎらわせるだけの調味料が、スープやコーヒーになる。

サバイバル経験がある年寄りには、テントや狩りの仕方を教えてもらえる。
その中の会話で、動物を捕獲するコツを教えてくれたりして、「何やればいいのかさっぱり」のゲームに取っ掛かりができる。
「こういうこと?」
と慣れることが成長になる。

このゲームなんか深い! というか、深さが読めない。
「こうこうこうなっていて、こうするゲームです」
とあえて説明をしない分(単にチュートリアル下手な気もするが)自分で道を切り開いている感がする。

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高難易度「エキスパートモード」は1回死ぬと最初から。
天候が悪化すれば現在地を見失う可能性もあるし、どこで引き返すかの判断がより重要になる。
何も持ち帰れなければ全員が飢える。
それだけのリスクを負っての廃墟探索。

慣れてくると(慣れてないけど)
中継地点のテントで暖を取りつつ、マイナス60度の極限地帯から大切なものを取ってくるとか、危険なミッションで仲間の過去がわかってくる。

食料を消費する足手まといに見えたメンバーが、雪に埋もれた大切なものを渡すことで「人間」に見えてくる。

生きているだけでもハッピーエンド。
そのうえで、それぞれの趣味や仕事が、命をつなぐ。
食料を消費するだけの足手まといはいない。
ゲームそのものが人間賛歌だ。



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デジタルイワシは生きている! PS4「ABZU」レビュー

3月にクリアしたゲームはこれ1つ!PS4ダウンロードソフト「ABZU」だ!
花びらになって各地に花吹雪を巻き起こす「フラウリー」、
ネットで繋がった誰かと砂漠を歩く「風の旅ビト」のスタッフが関わったダイビングゲーム。

どれも、美しい風景で魅せて、ストーリーはプレイヤーの想像にまかせる作風。フラウリーを初めてみたときは
「PS3で主人公が花びら1枚だと! こんなゲームありなのか」
と、少なくなるソフト数の中で、ゲームの新しい方向性を感じた。

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ゲームは、主人公のダイバーが目覚めるところから始まる。
海中に突っ伏しているところから目覚めるのだ。つまりサイボーグか、神か、死者で、普通の人間じゃない。
R2でもぐって、×で加速して、サンゴや魚とすれ違う。
魚につかまると、移動が速くなったり、イカはちゃんとスミをはいたり、それぞれの反応を見せてくれる。海は青と黒ばかりじゃない。黄色や緑のまぶしい海だ。

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文明もある。この世界では機械は「下向き三角形」でデザインされている。謎の警報装置のようなものが浮いてたり、ケーブルもよく見ると丸くない。
主人公のスーツも三角形がデザインされている…ということは、主人公はロボット?
だけどこいつ、瞑想する。場所によっては座禅を組んで、周囲の魚の視点に切り替えることができる。

一番テンションが上がったのは、スター性のあるクジラやダイオウイカよりも、イワシの群れに突っ込んだとき。
「フラウリー」で花吹雪がぶわっと巻き上がるところも綺麗だったけど、イワシ吹雪はもっと凄い。なんせ花びらと違って全匹生きてる。命がいっぱいだ。

どうせゲームキャラだから命は無い?
でも、プチプチは気軽に潰せるけど、ぬいぐるみの首ははねづらい。
命があるかどうかと、命を感じるのはまた別だ。

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ICOは2人で進むことが重要だったし、他もたいてい1人(プラス敵たち)で、孤独の中をしっとり味わいながら進んでいくイメージがある。
ABZUが他の多くの「雰囲気ゲー」と違うのは、命の数。
何も考えずに魚を眺めて音楽にひたるだけで安心感というか幸福感というか。
危害を加えるものはほとんどいない。画面中に命がいっぱい! いのちいのちいのち!の鮮やかさに圧倒される。

なのに、主人公は生きているのかすらわからない。少なくとも呼吸をする必要がないし、感情はなさそうだ。魚とたわむれて嬉しそうにしない。
途中で、やはり人間じゃないことがはっきりするシーンがあって、ちょっぴりの寂しさと、プレイする人によって自由な解釈が生まれる。海は命にあふれ淋しい。


題名だけのゲームレビュー「三人の海の男」


語ることがヤボなゲームがある。

絵、キャラクター、テキストを初めて知る喜びが大事なのに、内容を紹介することで初体験のよろこびを取り上げてしまう。ゲームを応援するどころか、迷っている人を「やった気」にさせて、購入熱を奪ってしまう。
そこで今回は新企画。
ゲームの内容にふれず、タイトルと概要だけで、買うまでをレビューします。

第一弾は3月14日に配信されたPS4ダウンロードソフト
「Burly Men at Sea:三人の海の男」1296円。
制作はBrain&Brain LLC  

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まず目に飛び込むのは、タイトルの翻訳っぽさ!異国感!
荷物をかついで背中を向けているように見えるかい?正面向いてるんだぜ俺たち、な巨大あごひげ男たち。独特の色使いやタイトルのセンスが、海外のインディーズ出身だぜ!と主張しています。

異国情緒があると興味がわく、と同時に「日本語で遊べる? 移殖は無事?」と不安になりますが、概要で日本語化がきちんとされていることを明記。この一文があるかないかでだいぶ違う。
「TIME」誌で評価されたことの紹介や、サウンドトラックが同時配信されることもあり、
「音楽にも力を入れているということかな?」
と期待を持たせてくれます。

1日でもずれたら北欧かぶりだった配信日

3月14日という配信日は絶妙。
この頃のPS4ユーザーは、だいたいフリープレイの「ブラッドボーン」でガスコイン神父という人にぶっ殺されたり、またはぶっ殺されたり、あるいはぶっ殺されたりしているのです。

他にも「北斗が如く」、基本無料「フォートナイト」、懐かし系では「餓狼伝説2」。
殺伐としたガッツリ重めのタイトルが多く、他機種の情報もどっさり入って、ちょっとしんどくなってきた、味の違うものがほしい所なんです。
翌日の15日には、バイオレンスだが違うテイストの「シルバー事件」「進撃の巨人2」
何か軽いのを!ちょっと箸休めできるタイトルのものがあれば…!

このタイミングでの配信は絶妙としか言いようがない。
翌日には、和製RPGに影響を受けた北欧のゲーム会社の「earthlock」が発売。
「三人の海の男」も舞台が北欧。
1日遅れたらまさかの「北欧」かぶりだった。
変わったゲームにも目を光らせている人は「北欧」というワードだけで振り返ってしまう。

この日、このタイトル、このハードでないと見逃されていた。
予告をしないでぶらりとやってくる感じ、それ自体が海の男っぽい。
自分も海の男のように豪快に迷わず購入するのが正しい態度だと思い、購入。




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80年代カルチャーへのドット絵ラブレター PS4「crossing souls」レビュー

80年代カリフォルニアに不穏な嵐。
雷が落ちて、クリスは親に隠れて進めていたNES(海外版ファミコン)を中断するはめになった。

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ビデオテープ風のノイズが乗ったカートゥーンで始まり、
主人公の部屋には、パックマン、スライム、マイケルジャクソン、インベーダー。
祖父は軍人、ママは「ハウルの動く城」らしき作品を執筆中、パパは元プロ野球選手。
ちょっとしたオブジェを調べるとしっかりコメントが用意されていて、左上の顔グラフィックも細かく動く。

おいおい、マジか。この作り込み。

父の魂であるバットを振り回しながら、天才科学者の血をひく友達、アル中の父とワゴンで暮らす女の子、バスケ選手に憧れる黒人少年ら、仲良しメンバーが夏休みの冒険に出かける。
つまり、スタンド・バイ・ミーで、バックトゥザフューチャーで、グーニーズで、ゴーストバスターズで、
町にはダイ・ハードっぽい人がいて、ポルターガイストで苦しむ家庭があって、ゲームセンターではコナミコマンドやコーラの起源の話。

あのころ愛した作品たちへのドット絵ラブレターが、画面いっぱいに広がって圧倒される!

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たぶん、背景のポスター全部に元ネタがある。

同じ本でも、キャラクターを切り替えて調べると違う反応をしたり、放置してたら退屈そうにボールで遊びだしたり、一人づつやられモーションがあったり。音楽も、楽しい夏休みの予感しかしない。
お堅い校長、パントマイマー、カンフーの達人風アジア人、秘密がありそうなホームレス。
戦うのか和解するのか?紫ジャケットの不良少年たち。
みんな手足長めでよく動く。日本ゲームの可愛くて緻密なドット絵キャラとは違う文化圏のドット絵キャラたち。

80年代の楽しいもの全部入りの町。開始直後のワクワク感なら年間ベスト級ゲームだ。

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そして、仲良しグループは世界を脅かす秘密を知ってしまい、旅に出る。
強大な軍隊を持つ大人達を出し抜いて、仲間を思う気持ちと、それぞれの特技で戦う。

シュワちゃんやランボーのそっくりさんネタを連発するだけでもファンは喜びそうだけど、ストーリーは意外とシリアス。
ヌルいパロディに頼った楽しさより、
「ガキが世界を救う物語」を照れずにやっているのがいい。

アクションは評価の高い「hyper light drifter」と同じ制作ツールなのか、感触がそっくり。チマチマ系だけど、敵を倒した感が気持ちいい。

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そして、ここから若干落ちることに触れざるを得ない!
この「80年代へのラブレター」。愛情はこもっているが、ここぞって場面に限ってスベってる気がする。


中盤で、僕も大好きな「バックトゥーザフューチャー3」のオマージュがある。
一定のスピードになると起動する車型タイムマシンに乗り込んで、線路で加速する名シーンだ。
充分に加速して時空を越えなければ、そのまま途切れた線路に突っ込んでしまう!

そこで唐突に「車をボタン連打で加速させるミニゲーム」が始まる。
なんか…センスを感じないというか(ボタン連打は80年代かもしれないけど)
盛り上がる場面で微妙なミニゲームを入れてくる。

グラフィックや音楽に比べて、ゲームの醍醐味である謎解きやボス戦のクオリティがそこまで高くない。
豪華食材を見せられたあとで、これからどんなメインディッシュが!?と待ってたら、サラダだけ出てきたみたいな。
配信直後だからか、地形に引っかかって進行不能とかしょぼいバグも何度かあった。

そして、賛否両論ありそうなストーリー。
個人的には評価したいけど、
冒頭の楽しさでテンション上がって、この町楽しい!ずっと見ていたい!と思うぐらいだったけど、本当に最初がクライマックスだったような。この気持ちをどうしてくれる。一旦好きになっちゃった登場人物たちの行方が気になるぞ。あいつも、あいつも、あの人も、あの人も。




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PS4「FIREWATCH」レビュー 潰されそうな静寂の中で、生き伸びるためのジョーク

題材も、会話のセンスも、ザ・海外のインディーズゲーム!だった「ファイアウォッチ」。

80年代。家庭に問題を抱えた中年男性ヘンリーが、逃げ出すように選んだ、山火事の見張り業務。
プレイヤーは主観視点で、見張り台でのひと夏を過ごす。

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他者との関わりを捨てたヘンリーの前には生活用品と、本と山。
ヘンリー視点だから、自分の顔すら見えない。
ゲームの中に「顔」がない。

多くのゲームは登場人物の「顔」を重視するけど、このゲームでは顔を出さずに「持ち物」で人を表現する。
山を歩くとキャンプの跡があって、ビール缶が大量に捨ててある。
そこにいた人にとって、必要な荷物が「ビール」だった。

「無人島に1つ持っていくなら何?」
って、答えで人間性を見る質問があるけど、
「孤独の中ですごすのに何を持っていくか」
で人を表現している。
この人はリュックのスペースにこれを入れたんだな、と思って小物類を見てほしい。
ゲームの進行に関係ないけど、ひとつひとつを手に取って見ることができる。

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他者をもっとも近くに感じるのは、近くの見張り台の女性と通信するときだけ。
山を歩いて動物の痕跡を見つけるたび、崖やキャンプの跡を見つけるたび、L2ボタンを押して返答。

他愛もない軽口を言いあって、未完成の地図を手にぐるぐる迷う。
欧米人は、追い詰められたときこそジョークを言う、とは聞くけど。
互いに顔も知らない男女が、この崖になんて名前をつけようとか、どんな顔をして、何があってこの仕事についたのか、とかひたすらジョークを言いながら山を歩き回る。
ジョークなんて直接的に役に立つことはないけど、それでもないと、今の環境を直視するとつぶされてしまう。

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ヘンリーは家庭の問題を先送りにした。
プレイヤーだってそもそも、みんなと騒いだり、オリンピックを観たり、モンハンワールドをするんじゃなくて、このゲームに何かひっかかるものを感じて、買ったということは
「パーティーより孤独を選ぶ人」だろう。
それでも、本当にひとりになったら生きていけない。

わざと楽しさを抑えて、ちょっと人生について考えてしまうような、静かで存在感のあるゲームだった。



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