大野更紗「シャバはつらいよ」 単なる闘病記で終わらず!

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わかってはいたけど、ふしぎな本だったなー。
3年前に発売された前作「困ってるひと」は、20代半ばにして全身の免疫システムが暴走する難病にかかった女子大生の話でした。
海外の難民を助けるために活動していた、いたってマジメでポジティブな女性が急に歩けなくなって、原因不明の病で病院を渡り歩いて、あげくお尻に腫瘍のようなものができて崩れだし、「お尻が崩壊した」という、この世の理不尽さを呪わずにいられないような内容、で、文章はドライ。
最後はややこしい手続きをいくつも片付けて、病気が完治しないまま退院してしまった。

そこから「シャバはつらいよ」に続く。
マンションの一室を借りて…まずドアを開ける力がない!
ステロイドの副作用で皮膚は弱まり、洗剤に触れない。紫外線を浴びることができない。骨粗しょう症防止のため豆乳は欠かせない。

一生、毎日29錠の薬と豆乳を飲まないといけない人生。

それだけで食欲がなくなりそうだ。
それでも、SNSを駆使して、友人とオシャレな杖と車椅子をゲットして、少しづつ行動範囲を広げていく様子が、その病状の割には軽いタッチで描かれる。
「体がアントニオ猪木にコブラツイストをかけられたように痛む」
とか、売り出し中の20代女性作家の表現じゃないぞという声もあるでしょうよ。でもこれは本来マジメで、笑いをさそう文章が苦手な更紗ちゃんが精いっぱいのユーモアを交えて悲壮感を感じさせないように書いてるの!だからこれはこれでいいの!

その後、震災という人生の危機に直面したあと、最後に彼女が選んだ道というのが、大学に復学してより困っている人を助けるために研究を続ける、というものだったので驚いた。

まだ、誰かを助ける気でおるんかい!
読者から見ると、あなたこそ救助される側の人間に見えるけど、助ける側にまわりたいのか!

ここでひとつ仮説を立ててみると、
少年マンガの主人公が怒りや愛の力で一時的にパワーアップするように、大野更紗という人は「誰かを助けたい」と思うとパワーアップするのだ。
逆に、人の世話になるしかない状態になったり、他人に同情されると衰弱していく。

そう考えると全て納得いく。病院を出て、闘病記なんだけど同情しにくい本を書いて、最後に行き着いたのが研究の道というのも。
よくある闘病記とは違った読後感で、面白かったです。だいぶ手に入りやすい前作のあとに読むのがおすすめ。






日本のバンドで一番好きなKIRINJIが復活してた…!これで8月が楽しみになる。
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